イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜/モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン

2021年10月15日(金)~ 2022年1月16日(日)
奇跡のような初来日づくし!さぁ、名画と出会いに丸の内へ

珠玉の印象派コレクションを誇るイスラエル博物館から作品69点を厳選し、光の系譜をたどる展覧会が10月15日より、三菱一号館美術館で始まります。モネの《睡蓮の池》をはじめ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガンなど、貴重な初来日作品との出会いは千載一遇のチャンス。同館上席学芸員で、フランス近世近代美術の講演でも活躍中の安井さんにお話を伺いました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール
《花瓶にいけられた薔薇》

1880年頃 油彩/カンヴァス 58.8×74.1cmイスラエル博物館蔵
Photo c The Israel Museum, Jerusalem

モネの連作の中でも格別な作品が来る!

 セーヌ川流域で育った印象派の画家たちにとって、水と水鏡の反映は大変重要なモティーフでした。4つの章で構成する本展では、第Ⅰ章の「水の風景と反映」に27点もの作品が並びます。この章を締めくくるモネの《睡蓮の池》は、1903年~1908年に描かれた「睡蓮」の第二連作・48点のうちの1点です。それら48点は、1909年にパリの画廊で公開され、大きな称賛を受けました。

 興味深い点として、48点中13点が今回の作品と同じ縦長の構図だということが挙げられ、その多さからみてもモネの強い思い入れがうかがえます。特徴的なのは、睡蓮が点在する池の水面の左右に枝垂れ柳とポプラの樹の影が映り、その間に青空と白い雲を反映しているところ。実は、この構図の「睡蓮」の絵は、日本の美術館3カ所が収蔵しています。ただそれらはどれも、黄昏時の赤みがかった色をしています。今回来日の1枚は、ひんやりとした空気を感じさせる寒色系であるところが決定的に異なります。

 この絵を20年前に初めてパリの展覧会で目にしたときは、大きな衝撃を受けました。20年越しで初来日の夢を実現した特別な作品です。

ゴッホもゴーガンも名作中の名作が来日

 第Ⅱ章は「自然と人のいる風景」です。欧州では自然や風景それだけを愛め でる習慣がなかったのですが、英仏では19世紀に優れた風景画家が登場し、ジャンルとして確立しました。コローは物語の登場人物を思わせる人影を入れて、伝統的な風景表現を継承しましたが、対照的にクールベなどは人がいない自然を描いています。この章にあるファン・ゴッホの《プロヴァンスの収穫期》は、1888年春にアルルに移り住んだファン・ゴッホが画家の共同生活を夢見ながら描いたもの。通常、アトリエに持ち帰って何層も重ね塗りするファン・ゴッホですが、この絵は麦畑で描いたまま、現場の印象をいきいきと伝える非常に重要な作品です。〝農民画家.ミレーを敬愛していたファン・ゴッホが、「種まき」につながる「収穫」に深い意味を感じて描いたことが見て取れます。

 同じく第Ⅱ章にある《ウパウパ(炎の踊り)》は、アルルを去ったゴーガンがタヒチに行って間もない頃に描いた作品です。このモティーフは後の作品に次々転用されていることから、ゴーガンの芸術の出発点の一つになったということができます。

フィンセント・ファン・ゴッホ
《プロヴァンスの収穫期》
1888年 油彩/カンヴァス 51.0×60.0cmイスラエル博物館蔵
Photo c The Israel Museum, Jerusalem by Avshalom Avital

百聞は一見にしかず実物を自分の目で!

  第Ⅲ章の「都市の風景」には、19世紀半ばのパリ改造などを経て、印象派の画家たちが新しい目で都市景観を見つめた作品が並びます。そして第Ⅳ章は「人物と静物」。ルノワールの作品6点などが出迎えます。ルノワールは肖像画が素晴らしいのはもちろん、花の絵も見逃せません。中でも薔薇の絵の評価は高く、本展にも《花瓶にいけられた薔薇》が初来日しています。

 ところで油絵は、絵の具が重なってできているので、印刷でもパソコンのモニターでも完全に再現することはできません。自分の目で直接実物を見て初めて、絵の具の重なりや透け具合などを確認することができます。さらに今回のように69点中59点もの作品が初来日というのは非常に珍しいこと。エルサレムにはなかなか行けないことを考え合わせると、本展はとても貴重な場となるはずです。ぜひ希少なこの機会に、名画との出会いをお楽しみください。

ポール・ゴーガン
《ウパウパ(炎の踊り)》
1891年 油彩/カンヴァス 72.6×92.3cmイスラエル博物館蔵
Photo c The Israel Museum, Jerusalem by Avshalom Avital

  • 会期  2021年10月15日(金)~ 2022年1月16日(日)
  • 休館日 月曜日と年末年始の12月31日、2022年1月1日(ただし、10/25・11/29・12/27[トークフリーデー]と1/3・1/10は開館)
  • 開館時間 10時~ 18時(祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21時まで)※入館は閉館時間の30分前まで。
  • 入館料(当日券・税込み) 一般1,900円/高校・大学生1,000円/小・中学生無料
  • 三菱一号館美術館 東京都千代田区丸の内2-6-2

◇JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分 ◇東京メトロ丸ノ内線「東京」駅(改札口・地下道直結)徒歩6分 ◇東京メトロ千代田線「二重橋前〈丸の内〉」駅(1番出口)徒歩3分 ◇都営三田線「日比谷」駅(B7出口)徒歩3分
※諸事情により、会期や開館時間等について変更する場合がございます。ご来館の際は展覧会サイトをご確認ください。
《お問い合わせ》050-5541-8600(ハローダイヤル)
《公式HP》https://mimt.jp/israel/
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