心を休息させる時間、お写経を始めてみませんか?


 墨をすることから始めるお写経。墨の香りには心を落ち着かせる効果があります。お写経はお手本に用紙を重ね、なぞって書くので初めての方も問題ありません。1巻を何回かに分けて書いても、家族で分担して書いてもかまいません。仏教の修行のひとつであるお写経に、今ではごく普通の老若男女が向き合っているといいます。その魅力を、薬師寺東京別院主事の根来穆道さんに教えていただきました。

根来 穆道(ねごろ ぼくどう) さん

法相宗大本山 薬師寺東京別院主事。
大学で環境問題を学んだ後、薬師寺に入山する。一生に一度だけの口頭試問「竪義」を4年前に満行。

気がかりの多い毎日にやすらぎの時間を

――お写経が大変人気ですが、その理由、よさは何でしょうか?

 「私たちは日々生活する中で、心に余計な荷物、ストレスや気がかり、コロナ禍の不安などを背負い込んでいるものです。それらを抱えたままでは、体を休ませても心は休むことができません。立ち止まり、荷物をいったん横に置く、そのために役立つのがお写経です。仏様の言葉であるお経を丁寧に写していると、その間は抱え込んでいるものを横に置くことができ、心に休憩を与えることができるのです。お寺に来て静かなお写経道場に入り、仏様の前で筆をとる、その非日常感も心によい影響を与えるのではないでしょうか」

――お写経をするためには心構えや準備が必要ですか?

 「薬師寺の加藤朝胤管主は、イライラしているとき、しんどいときほどお写経と向き合ってほしいとよく言っておられます。薬師寺でのお写経は、ゆっくり墨をすることから始めていただきます。これがすごく大事な時間です。そのあと筆をとって書写していくわけですが、イライラしていると、まずきれいな字は書けません。でも、集中してゆっくり続けていくうちに字が整ってきます。それは心が整ってきたからです。つまり、お写経するために事前に心を整えなければ、などと身構える必要はないということです。どんな心の状態であっても、座って墨をするところから始めてみるのが大切です。服装も自由です。薬師寺のお写経のよいところは、普段の自分のままで向き合えるところだと思います」

おかげさま、ありがとうの心を説く般若心経

――宗教・宗派にかかわらず多くの人がお写経する般若心経とはどういうお経でしょうか?

 「お手本の裏に般若心経を意訳した言葉を書いています。簡単に言いますと、偏ってはいけない、こだわってはいけない、とらわれてはいけないという3つの教えです。私たちは自分の考えややり方に偏ったり、こだわったり、とらわれたりするために、他人との摩擦が起きてしんどい思いをしたり、イライラしたり、悲しくなったりします。でも私というものは、体も人格も、実はたくさんの人たちのおかげで出来上がったものです。ですから周囲に対して『おかげさま』『ありがとう』と考えましょう、そう言っているのが般若心経です。270文字で、初めての方だとお写経に2時間くらいかかります。薬師寺では他に薬師経、唯識三十頌というお経のお写経もできます」

東京別院では、大みそかの19 ~ 22時に「越年お写経会」を実施。新年を迎える心の準備におすすめです。

かしこまらずに向き合うことが大切

――毛筆(墨)以外に鉛筆でのお写経も可能なのはなぜですか?

 「書き上げられたお写経はお寺に納めていただき、薬師如来様のご宝前にお祀りした後、奈良・薬師寺の納経蔵にお供えし、永代にご供養させていただきます。そのため、千年以上消えることのない筆記具、毛筆(墨)をお使いいただくのですが、墨をする時間がとれないときには、やはり劣化しない鉛筆の使用も可能としています。ご自宅で家事の合間に少しずつお写経したいときも、鉛筆ならさっと始められます。これも、お写経を身構えなければできないものにしたくないという薬師寺の考え方です。万年筆やボールペンなどのインクは長持ちしないので、使用しません。ちなみにご自宅でのお写経も、今日はちょっと疲れた、イライラするというときに、机の上にお手本と用紙を用意して10分、15分、1行、2行でもいいから仏様の言葉と向き合おうとすることが大切です」

お寺に行けない場合は自宅でもお写経が可能。申し込めばお写経用紙とお手本が自宅に届くので、好きな時間に書写して薬師寺に返送すると、永代供養されます。

1300年の歴史をもつ奈良の法相宗大本山 薬師寺では、1968年より白鳳伽藍復興のためのお写経勧進を行っています。1975年に始動した東京別院でも、年中無休・予約なしでお写経をすることができます(5名様以上は予約をおすすめします)。用紙とお手本を送ってもらい自宅でお写経を行うことも可能です。書き終えたお写経用紙は、納経後、奈良薬師寺本山のお堂の中に永代供養されます。
  • 住所 東京都品川区東五反田5-15-17 (JR五反田駅より徒歩数分)
  • 受付 365日午前9時~午後3時半(午後5時閉門)
  • 所要時間 約1時間半(般若心経の目安)
  • 持ち物 不要(用具は一式備えられています)
  • 納経料 般若心経:1巻2,000円(課税対象外)
  • 公式サイト https://yakushiji.or.jp/tokyo
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