フリーアナウンサー 笠井信輔さんインタビュー

「完全寛解」診断を経て順調に職場復帰!

じっと耐えて元気に戻ってきました!うれしいこと

 昨年10月にフリーアナウンサーに転身し、さぁこれからというときに体調が悪化、悪性リンパ腫の罹患がわかった笠井信輔さん。4か月余りという長期にわたる入院治療、自宅療養を経て、6月4日、晴れて「完全寛解(※)」と診断されました。「駄目かと思った」というところからの鮮やかな復帰、その一部始終を伺いました。

人生はプラマイゼロ!

ご復帰おめでとうございます。
 「ありがとうございます。散歩を毎日続け、体調・体力ともほぼ万全です。昨年10月からフリーになり、喜びや充実感がある一方、腰痛を抱えていて鎮痛剤を飲みながら仕事をしていました。ですから痛みが消え、人前で喋る仕事に戻ることができたという喜びは本当に大きいです」

どういう初期症状だったのでしょうか?
 「9月中頃から腰痛が出始めたのですが、フジテレビ退社に当たって相当量の荷物を運んだせいだと思い込んでいました。でもだんだん悪くなるので、整骨院に通いつつ並行して病院で検査を受けました。一般に、悪性リンパ腫という病気は血液検査では出てこないし、初期症状も現れにくいのでなかなかわからないそうです。僕の場合は腰痛という症状があったので、骨髄液を抜いて検査し、それで判明しました。最終的にがんと診断が下ったのは12月初め。ステージ4で予後の悪いタイプという検査結果だったので、僕はもう駄目かもしれないと深く落ち込んだのですが、その一方、妻は励ましモードでした。『大丈夫よ、元気出してよ、絶対治るから』と。妻は普段すぐメソメソするのに、僕のがんに関しては一度も涙を見せたことがなかったですね」

入院中はどのようなお気持ちでしたか?
 「副作用の出方によって、気持ちは上がったり下がったりでした。入院のときが一番ひどかったのですが、1回目の抗がん剤治療が非常によく効いて、痛みが7割くらい消えたときには『これはいけるかもしれない!』と持ち上がりましたね。昔からよく息子たちに話していたんです。人生は好調が続いていても挫折するときが来るし、悪いことが続いていても耐えていれば必ずいつか好転する。ちょうどプラマイゼロになるようにできている。だからよい状態にあぐらをかいてはいけないし、悪い状態に絶望することもないと。そういう考えを持っていましたから、それをブログの副題につけたんです。がんになって気弱になったけれど、じっと耐えていればきっとまた上がっていけるとの思いを込めたわけです。入院中はブログに救われました。職業柄、自分の病状を伝える義務があると思って開設したブログでしたが、多くのがん経験者やそのご家族がコメントを寄せてくださり、非常に力付けられました。」

入院中まさかの出来事が!

入院中も『僕のえいがの百三十科』連載をありがとうございました。
 「当初、連載には旧作を書いていこうと編集者Eさんと話をしていました。そんな中、映画会社は三密を避けるためDVD試写やオンライン試写を開始。おかげで僕は、病院にいながら新作映画が見られることになったのです。入院中に新作の映画評が書けるなんて思ってもいませんでした。そこでEさんに病院にDVDなどを送ってもらっていたのですが、その中の1本、人気俳優が主演のラブストーリー映画を見ていたら、途中で恋人に『僕は悪性リンパ腫』と告白するじゃないですか! 思わずベッドから転げ落ちそうになりましたよ。ラブストーリーで主人公が病気にかかったら亡くなるのが定石。宣伝担当者はそんな映画を同じ病気の僕に見せないよね?…と思って頑張って見続けたら。死んだよ。死んじゃった! すぐさまEさんに確認してもらったら、宣伝担当者は『笠井アナの病名は知っていたんですが、映画のネタバレになってしまうので、迷ったけど伝えませんでした』だって(笑)。動揺したけど『僕のえいがの百三十科』には極めて冷静な気持ちで原稿を書きました。大人の対応でしょ? それが入院中の大きな思い出です。」

最後に読者にメッセージを。
 「ご心配をおかけしましたが本当に元気になり、映画館で映画を楽しめるようになりました。映画館は換気もよく感染症対策もしっかり行われています。皆さんもぜひ映画館で映画を楽しんでください!」

新刊情報
「生きる力 引き算の縁と足し算の縁」
(KADOKAWA) 笠井信輔著

1540円(税込み)

闘病で得た絶望と希望をありのままつづった新刊

  笠井アナの闘病体験が本になりました(11月18日発売)。一時は死を覚悟しながらも生きる希望を求めて奮闘。SNSの力も借りて、がんで失った引き算を足し算に変えていきます。笠井アナはどうやって生きる術すべを見つけたのか、病気はもとより、さまざまな困難にぶつかっている人たちへ、ヒントと勇気がちりばめられています。ぜひご一読を!

かさい・しんすけ

1987 年フジテレビアナウンス部入社。2019年10月からフリー。新作映画を年間130本以上見るほどの映画好きで、弊誌連載の『僕のえいがの百三十科』は現在14年目。闘病を乗り越え8月から本格的に活動を再開した。

ブログ「笠井TIMES」https://ameblo.jp/shinsuke-kasai/