のん×門脇麦×笠井信輔 映画 『天間荘の三姉妹』公開記念スペシャル対談

2022年10月28日(金)より全国公開

漫画家・髙橋ツトム氏の原作を、ハリウッドを拠点に活躍する北村龍平監督が映画化した『天間荘の三姉妹』が10月28日(金)より全国公開されます。生と死、家族や近しい人たちとのつながりなど、見る者の心に多くを問いかける本作で姉妹役を演じたのんさん、門脇麦さんに笠井信輔アナウンサーがお話を伺いました。

 

のん/1993年兵庫県出身。女優、創作あーちすと。映画やテレビドラマ、CMなどで幅広く活躍中。近年の映画出演作に『星屑の町』(20年)、『8日で死んだ怪獣の12日の物語』(20年)、『私をくいとめて』(20年)、『さかなのこ』(22年)、脚本・監督・主演を務める『Ribbon』(22年)など。公式サイトhttps://nondesu.jp/

門脇麦(かどわきむぎ)/1992年東京都出身。2011年にドラマで女優デビュー。近年の映画出演作に『ATEOTD』(20年)、『あのこは貴族』(21年)、『昨日より赤く明日より青く CINEMA FIGHTERS project』(21年)、『あなたの番です 劇場版』(21年)など。Instagram:https://www.instagram.com/mugi_kadowaki/

笠井信輔(かさいしんすけ)/1987年フジテレビアナウンス部入社。2019年10月よりフリーアナウンサー。著書に、東日本大震災の取材に基づく『僕はしゃべるためにここへ来た』(11年)、闘病体験に基づく『生きる力 引き算の縁と足し算の縁』(20年)ほか。ブログ「笠井TIMES 人生プラマイゼロがちょうどいい」配信中。

映画「天間荘の三姉妹」
不思議な場所・三ツ瀬

笠井 この映画は臨死状態にある人の魂が、天界と現世の間の不思議な場所・三ツ瀬の老舗旅館「天間荘」で過ごし、自分のこれからを決めるというお話ですが、出演されるにあたってどう思われましたか?

のん 原作を読んだとき、この題材をファンタジーに落とし込んで、亡くなられた方の視点から残された人に向けるというのが素敵だなと思いました。大切な人を亡くした人にとって気持ちが前向きになれる物語なので、演じたいなと思いました。

門脇 現実の世界かと思うくらいに人間関係が地上と変わらない、普通に地続きでつながっているという三ツ瀬の描き方がすごく新鮮でした。そしてそれを悲観的に見せるのではなく、魂が存在する限り、肉体があるかないかだけの話だということを描いていて、いろいろな人に対して救いになる作品だと思いました。

笠井 僕も映画を見て、大切な人が亡くなって悲しみや後悔を引きずっている人が「あの人も三ツ瀬のような場所でこんなふうに楽しそうに暮らしているかもしれない」と思えたら、ちょっと気持ちが楽になる、そういう作品だと思いました。「だから自分も前に進もう」と、背中を押してもらえるところがすごくいいです。


現場は温かな空気感

笠井 大島優子さん含め、三姉妹の雰囲気がとてもよかったのが印象的でした。初共演ということですが、互いの印象はいかがでしたか?

門脇 大島さんはすごくフラットでさばさばしている感じ。のんちゃんは自由で天真爛漫で守ってあげたくなる感じ。その2人とのバランスがとても心地よかったです。

のん 撮影中にハロウィンがあったとき、大島さんがかわいいカチューシャをたくさん買ってきてくれて。

門脇 なつかしい! 感動的なシーンを撮っていたのに、みんなでカチューシャを頭につけて段取りをして、楽しかったですね。題材的にはシリアスにもなる話ですが、現場にはそういう空気感というより温かい空気感の方があったと思います。

人生を映す“走馬灯”、よいところだけ見たい(笑)——のん
私は、苦労した人生も愛おしく振り返りたい——門脇

笠井 そしてこの作品を楽しくしている要因の一つがイルカですが、麦さん、イルカに乗っていましたね。

門脇 はい。イルカにはかわいいイメージがありましたが、いざ一緒に水の中に入ってみると大きいし、口を開けたら怖いし、最初はうまくいかなくて。こちらに迷いがあったり不安があったりするとイルカに読まれるんです。苦労しましたが、自分の気持ちをぐっとイルカにぶつけることができたら、2日目くらいには乗ることができました。

のん 思った以上にたくさんのサインがあり、いろいろなジャンプがありました。最初イルカは全然言うことを聞いてくれなくて。でも、一つ一つクリアしていくうちイルカに感謝の気持ちが芽生えましたし、とても楽しかったです。


現世を生きる人の救いに

笠井 もし現実に三ツ瀬のような場所があったら、どう思いますか?

のん 亡くなった方の魂が休まる場所があると、残された人は「そういうところがあってよかった」と思えるので、あってほしいなと思います。

門脇 自分が残された側なら存在してほしいと思いますが、自分が死んだときは行きたくないです。亡くなった瞬間に終わりがいいです。

笠井 僕は闘病で生と死の間を右往左往した経験から、三ツ瀬は覚悟を確認する場所だと思いました。生きる覚悟、死ぬ覚悟をする場所だと。楽しく見ながら深いことを気づかせてくれる作品でした。もちろん、この映画の捉え方は人それぞれですが、お2人は見る人にどんなことを感じてもらえたらいいと思いますか?

のん 生きている人たちに見ていただく映画なので、「亡くなった人も残してきた人のことを大切に思ってくれている、そう気づくと現世を生きることに前向きになれる」というメッセージが伝わったらいいなと思います。

門脇 同じです。亡くなった方もこちらのことを思っているというだけで、すごく救われると思うので。

笠井 本当にいい映画をありがとうございました。


10月28日(金)全国公開
©2022 髙橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会
出演 のん 門脇麦 / 大島優子 ほか
プロデューサー:真木太郎 監督:北村龍平
脚本:嶋田うれ葉 音楽:松本晃彦 原作:髙橋ツトム 配給:東映

<STORY>

ひとは生きていく。いのちよりも長く。
小川たまえ(のん)は交通事故で臨死状態になり、「もう一度現世に戻って生きる」か「天へと旅立つ」か、自ら決断できるまで天空の町・三ツ瀬にある老舗旅館「天間荘」で過ごすことになる。そこでは初めて会う腹違いの2人の姉、天間のぞみ(大島優子)とかなえ(門脇麦)が待っていた。