笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#179

 ディア・エヴァン・ハンセン   梅切らぬバカ  聖地X

 

とにかく!「ウエスト・サイド・ストーリー」をスピルバーグがリメークする。それがついに公開される。あの音楽もダンスも芝居も完璧な作品を、スピさんはどうしようというのか?考えるだけで夜も眠れないのです(笑)。

  ディア・エヴァン・ハンセン

ブロードウェイを席巻した名作がついにスクリーンへ!

Ⓒ 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
11月26日(⾦) より全国ロードショー

 
 「感涙のミュージカル」というコピーに間違いはなかった。これほどナンバーが胸に刺さるミュージカルはそうそうない。社交不安症の主人公が、学校で孤立している少年の自殺後に「自分は彼の親友だった」と、少年の家族に嘘をついてしまう。それは家族を思いやった「優しい嘘」だったが、その嘘が思わぬ波紋を広げてしまい、大変な困難に直面することに…。数々の賞を獲得している話題の舞台が原作だ。

  タイトルロールの気弱な青年=エヴァン・ハンセンを演じるベン・プラットのあまりにも切ない歌声が耳から離れない。ミュージカルナンバーは全て、苦しんでいる人物たちの心の叫びや素直に表現できない心模様。数々の熱唱にどれも聞いているだけで目頭が熱くなってしまう。作品のテーマは「君は一人じゃない」。自殺する若者が増えているという。ぜひ、見てもらいたい。


監督:スティーヴン・チョボスキー
脚本:スティーヴン・レヴェンソン

キャスト:
ベン・プラット/エイミー・アダムス/ジュリアン・ムーア/
ケイトリン・デヴァー/アマンドラ・ステンバーグ/
ニック・ドダニ/ダニー・ピノ/コルトン・ライアン

   梅切らぬバカ

一緒に笑って、たまに怒って涙して。このありふれた毎日が宝物。

Ⓒ 2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト
 11月12日(⾦) よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
 
 コロナ渦でストレスが溜まる現代だからこそ、こうした温かな作品に触れていたい。自閉症の忠さん(塚地武雅)と、その母(加賀まりこ)の日常を追いながら、周囲の人たちとの交流を描く。

 加賀はアクの強い役が似合うが、久しぶりの主演作。心の広い母をゆとりある芝居で魅せる一方で、自閉症に対する「周囲の無理解」もしっかりと物語に織り込まれていて、そんなときの加賀ママの切り込みが快い。加賀が行った台本直しの鋭さと温かさに監督が感謝するのもむべなるかな。また、塚地のこうした役は「裸の大将」山下清役で立証済みだが、今回はやりすぎず、しかし、周りとのトラブルを起こしそうなギリギリのなりきりぶりは「レインマン」のダスティン・ホフマンをほうふつとさせるリアルな存在感。忠さんに皆が温かな気持ちになれるのだ。


監督・脚本:和島香太郎        

キャスト:
加賀まりこ、塚地武雅、
渡辺いっけい、森口瑤子、斎藤汰鷹、徳井 優
林家正蔵 、高島礼子

  聖地X

日韓融合チームでオール韓国ロケを敢行した、最恐のエクストリームホラー。

Ⓒ 2021「聖地X」製作委員会
11月19日(金)より渋谷HUMAXシネマ ほか全国ロードショー

なんて面白いんだろう。ホラームービーとして宣伝しているようだが、非常に知的なSFミステリー。風俗通いの夫に愛想をつかしたヒロイン(川口春奈)が逃げるように韓国に渡ると、そこには日本にいるはずの夫が…。  このドッペルゲンガー現象の謎を、小説家になりきれない兄(岡田将生)と解いてゆくのだが、「ある場所」がこの現象を生み出すという衝撃の事実に突き当たる。

 原作は劇団「イキウメ」の主宰者・前川知大の舞台。天才脚本家だと声を大にしていいたい。私は「イキウメ」の大ファンであり、欠かさず見てるが、前川さんの創出する知的ミステリーには毎回うなってしまう。しかし、これまでの2本の映画「太陽」「散歩する侵略者」は、その魅力を伝えきれていなかった。そして、ついに出来上がったのが知的倫理的解釈でSFを楽しむ前川ワールド「聖地X」なのだ。


原作:前川知大「聖地X」
監督・脚本:入江悠

キャスト:
岡田将生 川口春奈
渋川清彦 山田真歩 薬丸翔
パク・イヒョン パク・ソユン キム・テヒョン
真木よう子 緒形直人

笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai