笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#175

キネマの神様   リスタート SEOBOK/ソボク

 

光栄にも山田洋次監督とお食事させていただく機会がありました。以前「カイロの紫のバラ」を見た手塚治虫さんから「あんな映画を撮りなさい」と勧められたので、やっと「キネマの神様」で実現できたと、とてもうれしそうに話してくださいましたよ。

  キネマの神様

信じられる。映画の「神様」を信じ続けた、
男の人生、愛と友情、そして家族の物語。

Ⓒ2021「キネマの神様」製作委員会
8月6日(⾦) より全国順次ロードショー

 
 今年 90歳 になる山田洋次監督が映画撮影所を舞台に小津安二郎監督などが活躍した映画黄金期を楽しく活写した感動作。酒とギャンブルと借金で妻(宮本信子)や家族に迷惑ばかりかけているぐうたらな元映画監督の老人に沢田研二。その若き時代を演じるのは菅田将暉。

 とにかく 60 年前の日本映界の状況が勢いよく描かれ、山田監督の本音も投影されていて面白い面白い。さらに劇中劇として登場する当時の日本映画の再現があまりにも見事で感心してしまう。今に伝えようという山田監督の使命感もあるのだろう。だからより迫力がある。しかし物語の生命線はあくまでも年老いた夫と妻の夫婦愛である。山あり谷ありの展開を見せながら、涙なしには見られないフィナーレへと到達する。そしてこれは、山田監督の今は亡き奥さまに対するラブレターなのではないかと強く感じた。映画ファン必見の一作。


■監督   :山田洋次
■脚本   :山田洋次 朝原雄三
■原作   :原田マハ「キネマの神様」(文春文庫刊)
■出演   :沢田研二 菅田将暉  永野芽郁 野田洋次郎/北川景子 寺島しのぶ 小林稔侍 宮本信子

  リスタート

たった一度の失敗で人生は終わらない。
何度だって、「リスタート」できる。

Ⓒ吉本興業
7月9日(⾦)より北海道先行上映、7月16日(⾦)よりヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほか全国公開

 
 アクション映画を撮ることで定評のあった品川ヒロシ監督が、そのアクションを封印して新作を発表したのだが、これが実に良い。地下アイドルが不倫騒動に巻き込まれ、失意のどん底で地元の北海道に戻ってくる。そこからの再スタートを描く感動的な青春音楽映画。演技初挑戦の歌手、EMILY(HONEBONE)の自然体の演技が心地良い。こうした映画では、劇中で歌われる歌が極めて重要だが、主題歌「リスタート」はその歌詞の内容と、EMILYの心に迫る歌声によって、レディ・ガガの「アリー/スター誕生」に匹敵する名曲となった。

 これは、一度どん底に落ちてしまった吉本興業の仲間たちへのエールでもあるのだろう。美しい北海道の自然をとらえた映像や環境音にも大変なこだわりをみせる品川監督は、もはや、「お笑い芸人」とは言えなくなってしまったかもしれない。


監督・脚本: 品川ヒロシ

キャスト:
EMILY(HONEBONE) SWAY(DOBERMAN INFINITY/劇団 EXILE)
品田誠 朝倉ゆり(エラバレシ) 夏目ベール(純情のアフィリア) 藤井俊輔 向井日菜海
阿部隼也 かんた 岩崎う大 もりももこ
西野亮廣(キングコング)松田大輔(東京ダイナマイト)庄司智春(品川庄司)
小杉竜一(ブラックマヨネーズ)
黒沢あすか 中野英雄

  SEOBOK/ソボク

永遠の命を巡る壮絶な戦いを描く、SFエンターテインメント超大作。

Ⓒ2020 CJ ENM CORPORATION, STUDIO101 ALL RIGHTS RESERVED
7⽉16⽇(⾦) より新宿バルト9ほか全国ロードショー

 
 「トガニ」「密偵」「新感染」…コン・ユ出演作品にハズレなし。本作を見て改めてそう思った。
 主人公の元諜報部員(コン)が極秘に警護を要請されたのは、人類が初めて生んだクローン「ソボク」。一見真面目な好青年に見えるが「ヒト」ではない。その革新的技術を狙って次々敵が現れ、皆ソボクの命を奪おうとする。なぜ? 一方、主人公には絶対にソボクを生かしておかなければならない理由があった…。

 韓国映画としては珍しいSFものだがアクションを散りばめながら、ミステリー仕立てにストーリーを進行させる脚本がうまく、良質な作品に仕上がっている。特にソボクの正体が明らかになるクライマックスは、私が大好きな日本の傑作アニメ「AKIRA」に影響を受けたと見られる描写が登場。より興奮してしまった。


監督:イ・ヨンジュ

キャスト:
コン・ユ、 パク・ボゴム


笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai