笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#182

 ドリームプラン   愛なのに  ボブという名の猫2 幸せのギフト

 

米国アカデミー賞はコロナによりますが、日本時間の3月28日朝開催です。今年は、何といっても濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」。日本初の作品賞ノミネートなるか! さらに国際長編映画賞は受賞確実!とも言われているんです。要チェック。

  ドリームプラン

信じ続けた破天荒な父の「驚きの実話」。
2人の世界チャンピオンの誕生秘話とは?

 良すぎた! 平均点確約のウィル・スミス作品の中で抜きん出たクオリティー。2人合わせてテニスの4大大会などで30回も優勝しているビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹。テニス経験のない父親(ウィル)が、生まれる前から2人をテニスの王者にすると計画(プラン)を立て、それを実現した信じがたい実話だ。

 独善的な考え方と過激な手法で子供たちを導いていくのだが、ウィルはハリウッドスターとしての目の輝きやオーラを完全に封印し、強大な父というステレオタイプではなく、常にどこかに影と葛藤を抱えている人物像として父を作り上げている点が素晴らしい。自分たちは黒人であり白人と闘うことは差別と闘うこと。その宿命をも子供たちに教えてゆく姿に、父親とは何なのかと言う事を自分に深く問いかけてしまうほど心動かされるものがあった。念願のアカデミー賞主演男優賞。あるぞ!


Ⓒ 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
2月23日(水・金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督:レイナルド・マーカス・グリーン
脚本:ザック・ベイリン

キャスト:
ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、
デミ・シングルトン、トニー・ゴールドウィン、ジョン・バーンサ

  愛なのに

真っ直ぐで厄介で、
否定できないこの想い。

 映画ファンならこれは見逃せない。生きるのが下手な人間を描かせたら右に出るものがいない今泉⼒哉監督が脚本を書き、近年非常に注目されている城定秀夫監督がメガホンを取る。インディペンデント映画界のドリームマッチがここに実現した。 

 30歳を過ぎた古本屋のうだつの上がらない男(瀬戸康史)が女子高生(河合優実)に求婚され、同時にかつて愛した女性からも信じがたい連絡が入り、2人の女性の間で揺れ動くどうしようもない男の心情を描く。冒頭からもう目が離せない。河合は一途な女子高生を大変魅力的に演じて観客の心をつかんでいく。一方の瀬戸はピンク映画出身の城定監督だけあって、濃厚なベッドシーンもこなし、そのダメ男ぶりで新境地を見せている。
 人間はかくも愚かで、そしてこれほどまでに純粋なものなのかと、うらやましくも思えた一本。


Ⓒ 2021「愛なのに」フィルムパートナーズ
2月25日(⾦)より全国ロードショー!

監督:城定秀夫
脚本:今泉⼒哉 城定秀夫

キャスト:
瀬⼾康史 さとうほなみ 河合優実 中島歩
向⾥祐⾹ 丈太郎 毎熊克哉 オセロ(猫)

  ボブという名の猫2 幸せのギフト

茶トラの野良猫ボブが、孤独な青年の運命を変えた奇跡の実話の続編。

  生きる自信を無くしたホームレスの若者が、野良猫に生きる意味を見つけてもらう実話を映画化した感動作の続編。さすがの丁寧な作りで、涙の量は前作を超えている。なんといってもやさしい猫「ボブ」を今回も「本人」が演じているのが圧倒的にいい。もっとも前作とは異なる体験物語なので、前作を観ていなくても問題ないのでご安心を。

 実は、17年ぶりにわが家でも猫(アーニャちゃん!)を飼い始めたばかりで、そのかけがえのない愛すべき存在を再認識しているところだ。ホームレスにとってボブとの生活は楽しい一方で苦しい。貧困の中で描かれる人間と猫の絆はとても心に響いた。それを見守る人たちの温かさがこれまた良くて涙があふれてくるのだ。物語はもっと幸せな環境にボブを移すのかという展開に。主役のボブは残念ながら去年死去。追悼の思いも込めて観てほしい。


Ⓒ 2020 A Gift From Bob Production Ltd. All Rights Reserved.
2月25日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

監督・チャールズ・マーティン・スミス
原作:ジェームズ・ボーエン「ボブが遺してくれた最高のギフト」&「ボブが教えてくれたこと」(辰 巳出版より、好評発売中)

キャスト:
ルーク・トレッダウェイ、クリスティーナ・トンテリ=ヤング、
ファルダット・シャーマ、アンナ・ ウィルソン=ジョーンズ

笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai