笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#192

 非常宣言   ケイコ 目を澄ませて  トゥモロー・モーニング

 

「映画『THE FIRST SLAM DUNK』が面白い」という息子の掛け声で、観に行こうとしたら、家族全員が「行く」と(妻も!)。これって私が出演した「ゴジラ2000ミレニアム」を見に行った以来の家族総出で鑑賞。当たりそうだね、このアニメ。

  非常宣言

「⾮常宣⾔」発令!逃げ場なしの⾶⾏機内でバイオテロ発⽣

 もー、ホントに悔しい。なぜこうした面白いエンタメど真ん中の作品が今、日本映画に登場しないのか?  ソン・ガンホ&イ・ビョンホンというスターを主演にした韓国映画のスペクタクル大作だ。ハワイ行きの旅客機の中で謎の病原菌が撒かれるというバイオテロが発生し死者が続出、そして、その飛行機をどこに着陸させるかという管制サスペンスに加え、さらにピンチが…。

 これでもかと娯楽要素のつるべ打ち。でもどこかで見たことあるぞ。列車バイオテロの傑作「カサンドラクロス」であり、ソン・ガンホ刑事の妻が乗客だというのは「ダイ・ハード2」、あの部分は「タービュランス」か。いや、似てたっていい。あの傑作をお金をかけて、今作ったらどうなるか? その振り切りが気持ちいいのだ。だから…「新幹線大爆破」のリメークを作ろうよ!日本映画!


Ⓒ2022 SHOWBOX AND MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.
1月6日(金) 全国公開

監督:ハン・ジェリム
脚本:平瀬謙太朗 川村元気

キャスト:
ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、
キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン

  ケイコ 目を澄ませて

不安と勇気は背中あわせ。震える足で前に進む、彼女の瞳に映るもの。

 岸井ゆきの、スゴイ! その一言に尽きる。活躍めざましい彼女の最新主演映画。 

 ボクサー役で、しかも耳が聞こえないというハンディを背負う難役。「コーダ あいのうた」の家族のように明るくふるまうこともなく、ほとんどしゃべらずに心の中でさまざまな葛藤を抱えて生きているヒロインは、ボクシングに打ち込む時だけ心が解放されているよう。すべて目で語る岸井の芝居に引き込まれるが、見どころはやはりボクシングシーン。見たこともないような複雑なスパーリングシーンにくぎ付け。一体彼女はどれだけのトレーニングを積んでこの役に挑んでいるのか? 拍手を送りたくなるほどなのだ。そして試合に…。
 だが、三宅唱監督は、試合中「ロッキー」のようなエモーショナルな音楽を一切かけない。主役はボクシングではなく、岸井ゆきのの心そのものなのだと言っているかのようだった。


Ⓒ2022 「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS
12月16日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開

監督:三宅唱
原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版)
脚本:三宅唱 酒井雅秋

キャスト:
岸井ゆきの
三浦誠己 松浦慎一郎 佐藤緋美
中原ナナ 足立智充 清水優 丈太郎 安光隆太郎
渡辺真起子 中村優子 中島ひろ子 仙道敦子 / 三浦友和

  トゥモロー・モーニング

ロンドンを舞台に、「結婚前夜」と「離婚前夜」の男女に訪れた「出会い」の奇跡

 ミュージカルは大好きで、さまざまな舞台、映画を見てきているが、こんなのは初めて! 17曲あるナンバーのうち、ほとんどがデュエットなのだ。しかも、素晴らしいハーモニー。
 「明日の朝に結婚するふたり」、「明日の朝に離婚するふたり」。10年を隔てた男女の幸せな一日、辛い一日を同時並行的で描くというアイデアが良い。その2人が同じ場所で、違う場所で心情を吐露するその思いがデュエットになってゆく。
 主人公もヒロインも知らないという人が多い。  しかし、有名「舞台」ミュージカルで数々の主役を担ってきたラミン・カリムルーとサマンサ・バークスだからこその歌唱力。サマンサは映画版「レ・ミゼラブル」エポニーヌ役で歌ったあの素晴らしい「オン・マイ・オウン」の熱唱を覚えている人もいるだろう。世界的なミュージカル俳優だからこそ務まる役だった。


ⒸTomorrow Morning UK Ltd. and Visualize Films Ltd. Exclusively licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan
12月16日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座ほか

監督:ニック・ウィンストン
脚本・音楽:ローレンス・マーク・ワイス

キャスト:
サマンサ・バークス、ラミン・カリムルー、ジョーン・コリンズ、
ハリエット・ソープ、ジョージ・マグワイア


笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai