冬はじっくりクラフトビール

知れば楽しいビールの秘密

夏でも冬でも一年中おいしいビール。たくさんの仲間とにぎやかに、パートナーやカップルで、ひとりでのくつろぎの時間に、さまざまなシーンで活躍してくれます。そんなビールをもっとおいしく飲むための、なるほど納得ビールの秘密です。

ビールをもっとおいしく楽しく

専門のお店ができるほど、最近人気のクラフトビール。
職人たちが精魂込めてつくるビールは、味や香り、色、飲み方など個性はさまざま。その味わいは、ビールの数ほど違うといっても過言ではありません。知って飲むほど深みにはまる、匠のビール・クラフトビールの世界へようこそ。
取材協力/サッポロビール株式会社

おいしいビールができるまで

ビールの味わいを生み出す仕込室
写真提供=サッポロビール株式会社

 ビールは、糖分に酵母を加えてアルコール発酵させるワインや日本酒と同じ醸造酒です。ワインと大きく違う点は、その原料と工程にあります。ワインの原料であるブドウには、酵母が食べられる糖分が含まれているため酵母を加えるだけで発酵させることができますが、ビールの原料である麦芽の糖分はでんぷん質であり、酵母はこのままでは食べられません。このため、糖化という工程が必要です。ビールが出来上がるまでの期間は、仕込から約1か月強。丹念な工程を経たビールは、さまざまな味わいを私たちにもたらしてくれます。

  • 製麦
     ビールの原料である麦芽をつくる工程を、製麦といいます。水を与える「浸麦」で発芽した大麦は自らの酵素で分解を始め、「麦芽」となります。この麦芽に80度前後の熱風を送り込む「焙燥」を行い、分解を止めサイロで保管します。
  • 仕込・糖化
     麦芽を細かく粉砕した後、酵母が糖分を細胞内に取り入れやすくするために糖化工程を行います。糖化では、麦芽中の酵素によりデンプンから麦芽糖やブドウ糖に分解され、甘い麦汁となります。
  • 仕込・麦汁のろ過と煮沸
     糖化の完了後、麦芽の皮をフィルターにして液体だけをろ過抽出。この抽出した「麦汁」を煮沸釜に移しホップを添加して煮沸します。ホップを入れて煮ることでビールの特徴である苦みをつけることができます。. 仕込・麦汁の冷却 煮沸を終えた麦汁から凝集物の除去を行います。麦汁をワールプールタンクと呼ばれる槽のふちに勢いよく流し込み、凝集物を中央に集合させ取り除きます。
  • 発酵
     発酵する温度(下面発酵の場合は8.10度、上面発酵は15.20度)まで温度を下げ、酵母を添加します。添加された酵母は麦汁のブドウ糖、麦芽糖を取り込み糖を発酵させていきます。およそ1週間でできた若いビールを、貯酒タンクに移して再び熟成(後発酵)を行います。熟成期間は下面発酵ビールの場合で約1か月程度です。その後、ろ過したビールは缶や瓶、樽に移され出荷となります。
ビールの原料と種類

 ビールの原料は、主に麦芽とホップ、水です。ビールの味わいや香りは、麦芽の種類や焙燥方法、ホップによって変わります。 味や色など、そのビールの骨格を決めているのが麦芽です。スッキリしている、どっしり濃厚、苦み、甘みなどの味わいを作り出します。そして、味わいをさらに深める苦みとアロマをつけるのがホップ。麦芽がビールのボディだとしたら、ホップは洋服だといえるでしょう。昨今はさまざまな香りのホップが増えているため、より贅沢にバリエーションを楽しむことができます。

ビールのスタイル・バリエーション

下面発酵ビール

淡色濃色
ピルスナー(チェコ)
まろやかな味とホップの香り、きめ細
かい泡が特徴。
ヘレスビール(ドイツ)
ホップは控えめ。すっきりした味わい。
ミュンヘンビール(ドイツ)
麦芽の香りが強く、苦みは控えめ。
ボックビール(ドイツ)
アルコール度数6%と高め。

上面発酵ビール

淡色中等色濃色
ケルシュ(ドイツ)
フルーティーな香りを持つビール。炭
酸ガスが弱く泡立ちが控えめ。
ヴァイツェン(ドイツ)
フルーティーな小麦麦芽を使った
ビール。
ベルリナーヴァイセ(ドイツ)
小麦や乳酸菌を使用した、酸味の効い
たビール。飲むときにフルーツのシ
ロップを入れる。
ペールエール(イギリス)
アルコール度数が高め、少しの酸味と
強い苦みが特徴。
ビターエール(イギリス)
イギリスの国民的飲料。銅色の樽生
ビール。独特の強い苦みで室温での飲
用が特徴。
スタウト(アイルランド)
高温で焙燥した麦芽を使用した深い
色合い。強い苦みと高めのアルコール
度数。

ビールのスタイル

 ビールの種類は、ビアスタイルと呼ばれ酵母の違いによって大きく2つに分けられます。「上面発酵」の「エール」と「下面発酵」の「ラガー」があります。全世界で飲まれているビールのうち、90%が下面発酵であるラガータイプのピルスナー。8.10度の低い温度で発酵させたもので、クリアで洗練された味わいが特徴です。反対に、上面発酵のエールは芳醇で濃厚な味わい。じっくり飲みたいときに適したビールです。 また、麦芽の焙燥の温度を高めたり、ロースターを使用したりすることで色や香りに特徴を持たせることができます。深入りした黒麦芽を使った黒ビール、カラメル麦芽を使用したアンバー系など、

ビールの原料である大麦

アロマを決めるホップ

写真提供=サッポロビール株式会社