笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#161

 陽はまた昇る   復活の日  AKIRA

 コロナ災害の影響で新作映画が次々と公開延期となり取り上げる作品がなくなってきたので、しばらくは、ご家庭でも楽しめる笠井お勧めの映画を選ばせてもらいます。

  陽はまた昇る

TBSドラマの「下町ロケット」が好きな方は必見!

 先日、私も親しくさせていただいていた佐々部清監督が次回作の準備中に心臓の病気で急死された。本作は、その佐々部監督の初長編作。これが実にすばらしい。

 40歳代以上なら、録画機はべータマックスとVHSの2種類があって、一体どっちがいいのか?友達や家族と話し合ったことがあるだろう(懐かしいネ)。

 本作はビクター社員の加賀谷(西田敏行)、大久保(渡辺謙)が会社に隠れてVHSの開発を始めるという信じられない物語の始まりから、涙なしには見られない日本の技術者たちの製品化にかける思いがストレートに伝わってくる。技術大国日本の象徴的実話に胸を熱くしてほしい。TBSドラマの「下町ロケット」が好きな方は必見!「Amazonプライムビデオ」などで自宅で見ることができる。


2002年制作 配給:東映
監督:佐々部清
キャスト:西田敏行、渡辺謙、緒形直人、真野響子、仲代達矢 他

  復活の日

同じような未来が40年後にやってくるとは考えもしなかった。

 未知のウイルスと戦っている今だからこそ見てほしい。
 化学兵器として作られた殺人ウイルスが流出してしまい、南極を残して世界が滅んでいく姿と、生き残ろうとする人類の戦いを大変なお金をかけて作り上げた角川映画絶頂期の超大作だ。35ミリのムービーカメラで世界初の南極ロケやアメリカ大陸縦断ロケも行い、当初は15億円ほどの予算が組まれていたが、制作費はどんどん膨らみ、最終的には25億円に!予算10億円オーバーなどと言う信じがたい逸話が残されているが、本当だろうか(笑)。これもまた鼻息の荒かった当時の角川映画らしい。

 物語の前半は、新型ウィルスによって疫病が世界中に広まって行き、医療崩壊を起こす様が描かれている。

 1980年当時、劇場で本作を見ているが、同じような未来が40年後にやってくるとは考えもしなかった。しかし、そこは角川映画。世界滅亡の悲劇かと思いきや、人類が死滅したことで起きる新たな危機、タイムリミットアクション映画へと展開していくのが面白い。ご都合主義的部分は当時の角川ならではのご愛嬌だ(笑)。40年前にCGもない中、よくこれだけのものを作れたなと、今見ても感心させられる。

 現在、再ブレーク中の主演・草刈正雄が20代!あまりの美しさに驚くだろう。「Google  Play ムービー」等で見ることができる。


1980年制作 配給:東宝
監督:深作欣二
キャスト:草刈正雄、夏八木勲、多岐川裕美、永島敏行、丘みつ子、中原早苗 他

  AKIRA

32年前に予言的作品を作り上げた大友克洋監督が創造した未来(現在)の東京を十分に堪能できる。

 32年前に公開された伝説的アニメ映画の大傑作。セル画15万枚、制作費10億円。今ではもう制作不可能ではないかといえるクオリティの高い作品。音楽や効果音の入れ直しを大幅に行った4Kリマスター版ブルーレイが発売されたばかり。

 AKIRAという謎の力を持つ少年をめぐって、不良少年、テロリスト、政府軍、宗教団体が入り乱れる近未来SFアクションだ。

 何が凄いって、翌年には五輪が開催されるという2019年の東京が舞台なのだ。32年前に予言的作品を作り上げた大友克洋監督が創造した未来(現在)の東京を十分に堪能できる。

 しかも完璧主義の大友監督、膨大な量のコンテを自ら書いて、アニメーターに最大限のクオリティーを求めたために、制作に3年をかけると言うありえないこだわりを見せた。

 その結果、なめらかな人の動き、緻密に描かれた背景、どのカットも完璧で、古さなど微塵も感じさせない必見作となった。ネット視聴可。


1988年制作 配給:東宝
監督:大友克洋
キャスト:岩田光央、佐々木望、小山茉美、石田太郎 他

笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai