笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#158

 Fukushima 50   Red  風の電話

 闘病中の笠井です。映画会社の特別な計らいで、作品を見せて頂きました。
現在、思いの他、副作用が少なく、今月は原稿が書けそうです。良かった!どうぞよろしく、お願い致します。

  Fukushima 50(フクシマフィフティ)

東日本大震災発生。想像を超える被害をもたらした原発事故。最前線で戦い続けた人々の物語

 

 東日本大震災を題材にして、とてつもない力作が誕生した。福島第1原発爆発事故が発生した時、福島原発の中で何が起きていたのか? 職員たちはどう動いていたのかを事実に基づき克明に描いた衝撃の映画化だ。

 これまで様々な書物やテレビ番組でその概要は知っているかもしれないが、原発職員たち(渡辺謙、佐藤浩市の演技に脱帽)が、どれだけ命をかけて原発の爆発を防ごうとしていたのか、迫真の展開は涙なしには見られない。

 一方で、現場の障害は何だったのか?官邸、東電、時の総理大臣、全ての関係者が健在の中、包隠さず問題点(問題の人物)を描いてる部分に、監督やプロデューサーの並々ならぬ覚悟を感じるのだ。

 これは、原発反対派、容認派関係なく、少しでも多くの日本人が見るべき必見作である。


2020年制作 配給:松竹、KADOKAWA
監督:若松節朗
キャスト:佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、安田成美、緒形直人、火野正平 他

  Red

直木賞作家(島本理生)の問題作が映画化。自分も知らない「本当の自分」が、そこにはいた。

 女と男が10年ぶりに出会ってしまい、運命的に魅かれあってゆく濃厚な大人のラブストーリー。女性にとっての幸せはどこにあるのかを描くことに定評のある三島由紀子監督の手にかかると、この愛の形は単なる不倫として片付けられない。母としての幸せか?女としての幸せか?の葛藤にゆれる夏帆と、他人も自分も愛せない妻夫木聡の心情を木村信也キャメラマンの絶妙のカメラワーク(寄り引きのタイミング、手持ちカメラの微妙な揺れ、そして光と影)が見事なまでに物語る。また、2人の愛欲の深さの象徴として長く官能的なキスシーン繰り返され、自分の心も浮き足だってくる。

 「人間どれだけ惚れて死んでいけるか」。この台詞が全てを表している。心中モノではないが、令和時代の「失楽園」といえなくもない。


2020年制作 配給:日活
監督:三島有紀子
キャスト:夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗、片岡礼子 他

  初恋

三池崇史監督の初ラブストーリー。最後に出会った「最初の恋」がはじまる。

 やはり三池崇史監督は一筋縄ではいかない人だ。アクションやバイオレンスの第一人者が初めてオリジナルのラブストーリーを手がける、ということで大変注目していたのだが、劇画調の導入に最初はめんくらった(笑)。

 これはいったいどういうこと?そのうち、そうか!こういうモノなのか?と割り切ったころから一気に楽しめる自分がいた。”ラブストーリー”の常識を打ち破る作品で、「さすが三池」「やっぱり三池」、レビューは賛否両論か。一番驚いたのはアニメの使い方。あのシーンだけをアニメにするってどういう事なのか!

 今、病室だが三池さんにインタビューしたくて仕方ない。日本映画でこういうパートアニメの使い方は恐らく初。もっと驚いたのはベッキー!だ。信じがたい怪演ぶりで夢に出てきそう。


2019年制作 配給:東映
監督:三池崇史
キャスト:窪田正孝、大森南朋、染谷将太、小西桜子、ベッキー 他

笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai