笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#169

 ヤクザと家族 The Family   名も無き世界のエンドロール  花束みたいな恋をした

 

去年は入院のため鑑賞本数が56本と例年より100本近く少ないですが、ベスト5を捻出しました。①Fukusima50 ②浅田家! ③朝が来る ④ミッドナイトスワン⑤サイレント・トーキョー 次点は「罪の声」。皆さんはどれを観ましたか。

  ヤクザと家族 The Family

父も母もいないけど
私には「家族」がいました。

 これを「令和版ゴッドファーザー」と呼ぶのは誉めすぎだろうか? ヤクザの組長を偶然助けたことから組員になった男(綾野剛)の裏街道といえる人生模様をあまりにもドラマチックに描く。半端者たちが憧れる強いヤクザから、暴対法を経て経済ヤクザとなり、そして今や「反社会勢力」として世の中のゴミ扱いされる激動の時代をヤクザたちはどう生きてきたのか? 抗争に明け暮れる仁義なき時代と異なり、家族を巻き込みながら進むドラマに藤井道人監督が深く切り込んでゆく。

 反社時代のヤクザをこんなふうに描くメジャー作品はこれまでなかったのではないか?また、今村圭佑キャメラマンのカメラワークが自在に情感を醸し出し、あまりにも見事。チンピラから歳を重ねる姿を綾野が熱演し、組長・舘ひろしのなんたる存在感、カッコ良さ。北村有起哉、市原隼人、役者が皆光っている。


(C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
1 月 29 日(金)全国公開

監督・脚本:藤井道人

キャスト:
綾野剛 尾野真千子 北村有起哉 市原隼人 磯村勇斗 / 寺島しのぶ 舘ひろし

  名も無き世界のエンドロール

小説すばる新人賞を受賞した作品を実写化。
想像を絶する衝撃のエンドロールが始まる!

 男女3人が織りなす大どんでん返しラブストーリー。10年をかけた壮大な「プロポーズ大作戦」を描く。自動車の修理工(新田真剣佑)は偶然出会った人気モデル(中村アン)に好意を抱くが全く相手にされない。そこで彼女にふさわしい男になるために壮大な計画を立てるというのが物語の柱。

 10年後、実行の日に計画通り親友(岩田剛典)が行動を起こすのだが…。この「大作戦」少々荒唐無稽で、特に中盤が現実感に乏しく物語の強度の弱さが目立つ。しかし!クライマックスのクリスマスイブになってからの20分間、突然、目が離せなくなるのだ。「ストロベリーナイト」「キサラギ」「累 ―かさね― 」の佐藤祐市監督はこれをやりたかったのか!

 観客は劇中に登場する群衆と同化し、目の前に出現したシーンにくぎ付けになってしまうのだ。驚きの結末は見てのお楽しみ。


(C)行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
1月29日(金)全国ロードショー

監督:監督:佐藤祐市 脚本:西条みつとし

キャスト:岩田剛典 新田真剣佑 山田杏奈 中村アン / 石丸謙二郎 大友康平 柄本明

  花束みたいな恋をした

はじまりは終電だった…。
終電後に恋に落ちた2人の忘れられない5年間の物語。

 花束みたいに「恋愛映画」が花ざかりの時代。しかも、菅田将暉&有村架純という大物をキャスティング。いったいどんな? 期待と不安で見始めたら、やっぱりよかった! キラキラ青春ムービーでも難病ものでもない!

 「恋愛と結婚はどう違うのか?」という永遠のテーマを2人の5年間の愛の行方を追いながら繊細に描いてゆく。まさにタイトルが示すように花束のように豊かなシーン一つ一つが積み重なって恋愛が結婚へと向かうの中で、なぜ50を過ぎたおっさんでも非常に共感できたのか? スタッフを見て納得。脚本は「東京ラブストーリー」から「カルテット」まで恋愛映画の巨匠・坂元裕二。監督が「この世界の片隅に」や「罪の声」の土井裕泰なのだ!むしろ既婚者の方が感動する。クライマックスの菅田の涙の訴えに激しく共感! 「その通り!」と心の中で叫ぶ自分がいた。


(C)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
1月29日(金)より、全国公開

脚本:坂元裕二 監督:土井裕泰
キャスト:
菅田将暉 有村架純/清原果耶 細田佳央太/オダギリジョー/戸田恵子 岩松了 小林薫 他

笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai