笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#176

孤狼の血 LEVEL2   ドライブ・マイ・カー 白頭山大噴火

 

ちょっと、言いたいんですけど、カンヌ国際映画祭で4つも賞をとった濱口竜介監督。マスコミはもっと騒いでいいですよ。これすごいことなんです。海外からは高い評価と実績を積んでいるのに、日本ではあまり知られてないなんておかしいですよね。

  孤狼の血 LEVEL2

あの「衝撃」から3年。灼熱の男たちが帰ってくる。

Ⓒ2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
8月20日(⾦)より全国ロードショー

 
 うおおおおおおおお!大興奮。映画はこうでなくちゃいけない。傑作だった前作で主人公(役所広司)を失ったが、そのあとを継いだ若き刑事(松坂桃李)がワイルドで魅力的な不良刑事になって広島のやくざと渡り合う、大迫力のアクション大作になった。とにかく物語が面白いのなんの。冒頭から緊張感の連続でまったくゆるみがない。

 最大の見どころは、鈴木亮平が演じる敵役。あまりにひどい。恐らく日本映画史上最悪最強の極悪犯罪者。見ながら「どうするんだよ桃李!」と思わず独りごちてしまうような強烈な鈴木の存在感に快感さえ覚えてしまうのだ。そして、この男に立ち向かう松坂の悪徳刑事の中の優しさが〝 あだ 〟となり、どんどん追い込まれてゆく、展開に目が離せなくなる。観客もだまされる予想もしなかったクライマックスをぜひ楽しんでほしい。さらなる続編絶対製作希望。


監督:白石和彌
 
原作:柚月裕子「孤狼の血」シリーズ(角川文庫/KADOKAWA刊)

キャスト:
松坂桃李  鈴木亮平  村上虹郎 西野七瀬
斎藤 工 ・ 中村梅雀 ・ 滝藤賢一  中村獅童  吉田鋼太郎

  ドライブ・マイ・カー

村上春樹原作の短編小説を実写化。
誰しもの人生に寄り添う再生の物語。

Ⓒ2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
8月20日(⾦)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
 
 見たあと「これはカンヌ映画祭で評価されるだろう」と思ってはいたが、日本人初の「脚本賞」はじめ4つも賞を受賞するとは! まさに今年のカンヌの台風の目となった作品だ。

 妻を失った喪失感から抜け出せない舞台俳優兼演出家の家福悠介(西島秀俊)が、地方の演劇祭で過ごす時間と心のうつろいを丁寧に描く。その多くが、タイトル通り車の中のシーンに費やされるのだが、雇われた無口な女性ドライバーとの交流が物語の要になる。テーマは「ディス・コミュニケーション」とみた。主人公自身が無口で、奔放だった妻にも、演出をする俳優たちにもあまり言葉をかけない。濱口竜介監督は人とどう対応するかという前に、自分自身の言葉と向き合う必要性を説く。なんといっても村上春樹の短編を3時間の作品に肉付けする勇気とその内容の濃さに拍手を送りたい。濱口監督は日本映画の重要人物なのだ。


監督:濱口竜介

原作:村上春樹

キャスト:
西島秀俊 三浦透子 霧島れいか/岡田将生

  SEOBOK/ソボク

大噴火まで残された時間は、75時間。
成功率わずかの半島救出ミッション!

Ⓒ2019 CJ ENM CORPORATION, DEXTER STUDIOS & DEXTER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
8⽉27⽇(⾦) よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

 
 今月も3本目は韓国映画。だって面白いのだから仕方がない。最近あまりお目にかかれないグレート・ディザスター(大災害)ムービーだ。しかも、それだけじゃない! 北朝鮮と中国の国境に位置する火山・白頭山が大噴火、韓国まで大地震が発生する。

 冒頭からのスペクタキュラ―なシーンに興奮を覚えている暇はない。この後の「超大噴火 → 半島壊滅」を止めるためには北朝鮮の核爆弾を使用する必要があると判断した韓国軍が「北から核を盗む」という、インポッシブルなミッションを強行。もちろん立ちはだかるのは北朝鮮軍。しかも、北の核となれば、アメリカや中国も黙っていないという、大噴火・大地震・スパイ合戦・戦闘・国際紛争、ここに韓国映画お得意の涙の人間ドラマを盛り込んで、これでもかとお金をかけた超大作! マジ面白い! これをシネコンの大スクリーンで見ずしてどうするんですか!


監督:イ・ヘジュン、 キム・ビョンソ(撮影監督)

キャスト:
イ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、マ・ドンソク、 チョン・ヘジン、ペ・スジ


笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai