軽度のうちに対処したい「外反母趾」

日本人・中高年の有病率は約30%

 

戦後の靴文化の広がりとともに、日本人の足にも増加した外反母趾。ただ、一口に外反母趾といっても病態は人によってさまざまです。悪化すると歩行障害の原因にもなりかねないため、軽度のうちに整形外科に相談されることをおすすめします。

原因は足に合わない靴

 外反母趾とは、足の親指(母趾)が外(小指側)を向いた変形の状態のこと。遺伝、女性、足の骨格の個性、生まれつきの関節の柔らかさなどの要因もありますが、圧倒的に履物の影響が大きいことが知られています。下駄やわらじなどを履いていた時代の日本ではほとんど見られませんでしたが、西洋の靴文化の流入とともに患者が増え、昨今では中高年の3〜4人に1人は外反母趾であると報告されています。

  外反母趾になると、内側に突出した母趾のつけ根が靴に当たって痛みが生じます。進行すると隣の趾(あしゆび)にも影響を及ぼし、槌趾(つちゆび)変形(ハンマートゥ)をもたらします。すると足裏や趾にタコができ、母趾の付け根の痛みよりもこちらの痛みをより強く訴える患者さんも少なくありません。母趾が隣の趾の下に潜り込んでしまうと変形の進行を遮るものがなくなり、進行速度が早まります。また外反母趾変形が扁平足(土踏まずがつぶれた状態)や開張足(5本の指の付け根を横に結ぶアーチの形が崩れた状態)を悪化させ、さらに外反母趾が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。 

 

外反母趾の対策と治療

 当科では患者さんの希望を加味しつつ、個々の病態に応じて運動療法から靴指導、足底挿板(インソール)を用いた装具療法、手術まで幅広い治療を提供しています。軽度の外反母趾には運動療法が有効で、硬くなった変形をほぐすために行うストレッチ体操(両足の母趾に幅広のゴムをかけ、かかとを合わせたまま両足のつま先を開く[ホーマン体操])や、母趾を広げる力を鍛えるために行う筋力トレーニング(足の指を開いてパーの形を作る)などを推奨しています。

  靴はトゥボックス(趾を収める部分)が広いもの、先端が母趾寄りのもの、母趾の付け根部分に縫い目がなく同部の素材が柔らかいものを選ぶことがポイントです。ただ単にサイズが大きめの靴は中で足が移動してしまい、趾の変形を助長するおそれがあります。  
 

 変形の進行で生活に支障を来している場合は、一人一人異なる足の変形に対応しつつ、術前足底圧計測や綿密な計画に基づいて手術を行います。一般的には骨を切ってずらして固定する「骨切り術」を行い、変形が隣趾に及ぶ場合はその手術も同時に行います。

 なお、さまざまな外反母趾用装具が市販されていますが、矯正効果や進行予防効果について十分な検証がなされていないものが大半なので注意が必要です。

監修
松本卓巳

まつもと・たくみ

東京大学医学部附属病院
整形外科・脊椎外科 講師


12001年東京大学医学部卒業。医学博士。東京大学整形外科の関係病院勤務やスイスおよびアメリカへの留学で研鑽を積む。2019年より現職。日本整形外科学会専門医。日本リウマチ学会専門医・指導医。日本足の外科学会認定医・評議員。