大人の「ADHD(注意欠如・多動症)」

特性とうまく付き合うことで自分らしさを生かす生活が可能

 

遅刻やケアレスミスが続いたり、不用意な発言で人間関係がうまくいかなかっ
たりして困っていませんか? 実は子供の頃から抱えていたのに見過ごされ、
大人になってから気づくことも多いのが発達障害の一つ、「ADHD」です。

そもそもADHDとは

最近、大人になってからADHDと診断されたという方について、メディアなどで見聞きすることが増えました。ADHD とは、Attention-Deficit/HyperactivityDisorder(注意欠如・多動症)の略称で、不注意、多動性、衝動性などが特徴の発達障害です。落ち着きがないと全てADHDというわけではなく、診断には12歳以前に始まっていること、複数の場面で症状が確認されること、症状によって生活に支障を来していることが必要です。

 ADHDは子供の約7%に認められるとのアメリカの報告があり、決して稀ではありません。下に挙げたような神経心理メカニズムが考えられており、感情のコントロールの苦手さも注目されています。成長に伴って状態は変わりますが、大人になっても生きづらさを持ち続ける 人が少なくないと分かってきました。 

 ADHDのある人、特に受診や相談の場に来る人は、いろいろな精神・行動上の問題を伴っていることがしばしばです。対人コミュニケーションの困難やこだわりが特徴的である自閉スペクトラム症をはじめとして、他の発達障害を併せ持つ場合には、いっそう生きづらくなります。発達の経過で傷つく体験を重ねたりすると、うつや不安や怒りなどを伴ってくることがあります。

ADHDを疑ったら

 相談先としては発達障害に関わる機関が考えられ、大学の学生相談や職場の産業保健の部署も候補に挙げられます。また都道府県・指定都市の発達障害者支援センターで情報を得ることもできます。

 受診する診療科は主に精神科です。ADHDに詳しい医師には児童精神科医がいますが、数が少ない上に子供だけを診ている場合もあります。発達障害を脳の個性と捉えて、個々の患者に合わせた診療をする精神科医にかかるとよいでしょう。診察では、発達の経過を含めた詳しい問診や心理検査などを経て診断・評価されます。例えば脳波のような1つの検査だけで診断されることはありません。
 
 そしてADHDと診断された場合には、患者がADHDのある自分について理解し、自分の良さを発揮しつつ自分の苦手にうまく対処できるよう心理社会的療法を進めます。必要に応じて、職場など周囲の人々に理解を促すような働きかけがなされます。日本では大人に使用できるADHD治療薬が3種類あり、症状に応じて薬物療法が行われることもあります。

監修
金生由紀子

かのう・ゆきこ

東京大学医学部附属病院
こころの発達診療部 准教授


1984年東北大学医学部卒業。児童精神科医。医学博士。日本精神神経学会精神科専門医。日本児童青年精神医学会認定医。子どものこころ専門医。東京大学医学部附属病院精神神経科、北里大学大学院医療系研究科などを経て2010年より現職。『成人の発達障害の評価と診断 多職種チームで行う診断から支援まで』(岩崎学術出版社)など著書多数。