冬に気をつけたい心臓の病気

寒さ、温度差が心臓の負担を大きくします

 

 寒さや温度差が引き金となり、心臓に負担をかけがちな冬。心疾患で亡くなる方の数は冬季に多くなることが厚生労働省の統計から明らかになっています。体の変化に気を配って予防をコツコツ行い、定期的な検診で備えましょう。

要因は寒さと温度差

気温が下がる12〜2月は、一年の中でも心臓の病気に注意が必要な時期です。特に気をつけたいのが狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患で、いずれも放っておくと心不全の原因となってしまう怖い病気です。高齢者に多い病気ですが、近年では40〜50代の発症も増えています。

 これには冬場の低い気温が関係しています。人の体は寒さを感じると血管が収縮し、体温の発散を防ごうと働くのですが、そのとき動脈硬化などで血管内が狭くなっていると、血液の流れが滞ったり詰まりが発生したりします。このような血管の狭窄や閉塞が心臓に血液を送る冠動脈で起きると、狭心症や心筋梗塞を引き起こしてしまうのです。また血管が狭くなると、体は血圧を上げて全身に血液を送ろうとします。そのため、ポンプの役割をしている心臓の負担も大きくなってしまいます。


 さらに、寒さに加えて要注意なのが温度差です。例えば暖かいリビングから寒い脱衣所へ行き、衣服を脱いで寒い浴室に入ると、血管が収縮して血圧はどんどん上がります。その状態で熱いお湯に浸かると、今度は血管が広がり血圧は一気に下がります。こうした急激な血圧変化も心臓に負担をかける要因の一つです。 

血圧の変化を緩やかに

 冬場の心疾患を予防するには、温度差による血圧の変化を緩やかにする工夫が大切です。屋外ではしっかり防寒対策をして、家では脱衣所や浴室を使用前に暖めたり、湯の温度をぬるめ(40度前後)にしたりするなど、温度変化をなるべく小さく抑えましょう。

 また、脱水も血圧上昇の要因となります。入浴前や就寝前、起床後には水分補給を忘れずに。もともと血圧の高い方は血圧を測る習慣をつけ、日常的に自身の血圧を把握しておくと、血圧が上がる状況や時間帯などに注意を払いやすくなります。
  

 なお、心臓病を疑う症状には、動悸、息切れ、胸痛などが挙げられます。階段を上がったり急いで歩いたりしたときに胸が痛くなり、休憩すると痛みが治まるというのが狭心症の典型的なサインです。時間がたっても胸の痛みが引かなかったり、冷や汗が出てきたりするときには心筋梗塞の疑いがあります。その場合は我慢せず、すぐに救急車を呼びましょう。  心臓病はがんに次いで死亡率の高い病気です。冬場は特に注意するとともに、定期的な検診をおすすめします。

監修
倉持雄彦

くらもち・たけひこ

医療法人徳洲会 千葉西総合病院
副院長・循環器内科主任部長



1994年島根医科大学(現・島根大学)大学院修了。アメリカ国立衛生研究所への留学、島根大学医学部附属病院での勤務を経て2003年より現職。日本循環器学会専門医。日本内科学会総合内科専門医・指導医。日本心血管インターベンション治療学会専門医。医学博士。