高齢化で急増する「パーキンソン病」

正しく理解し、きちんと対処することが大切

 高齢化が進む日本で、近年パーキンソン病患者が急増しています。パーキンソン病は厚生労働省の指定難病の一つであり、根治の難しい難病ですが、適切な治療を行えば症状の進行を抑えながら生活することは十分可能です。

パーキンソン病とは

 私たちの体は脳からの指令が筋肉に伝わることで動いており、その動きを円滑にしているのがドパミンという脳内の神経伝達物質です。パーキンソン病は、このドパミンを作る神経細胞が徐々に壊れてドパミン不足となり、神経細胞の脱落により運動症状が引き起こされる神経変性疾患の一種です。


 現在、国内の患者数は15万.20万人とみられ、全人口に占める割合は10万人あたり150,200人。高齢になるほど増加し、60歳以上では10万人あたり約1000人に跳ね上がり、今後ますます増えると予想されています。


 しかしドパミン神経細胞の減少について、詳細はまだ十分解明されていません。神経細胞の変性は発症の何年も前からゆっくり進むため、早期発見しにくいという点も治療を難しくしています。また患者に性別や生活習慣などの有意な傾向、遺伝性も認められていません。

適切な治療が症状を軽減

 パーキンソン病の症状は、発症初期から見られる「運動症状」と「非運動症状」に大きく分けられます。


 運動症状は、無動・筋強剛・静止時振戦・姿勢反射障害の4つが特徴的で、特に静止時振戦と呼ばれる手足の振るえは自覚のきっかけとなる症状の一つです。


 非運動症状は、便秘や起立性低血圧などの自律神経症状、不安、うつなどの精神症状、疲労、痛み、睡眠障害など、さまざまな症状が含まれます。これらにはドパミン神経以外の神経系の障害が関わっており、運動症状が始まるかなり前から現れていることがわかってきました。

 治療には薬物治療、外科的治療、リハビリテーションがあり、脳の中でドパミンに変換されてドパミン不足を補う抗パーキンソン病薬などの薬が、近年めざましい成果をあげています。また適度な運動の継続が症状の進行を抑制できることが明らかとなり、早期から導入できるリハビリテーションの重要性も注目されています。外科的治療は、薬物治療で十分な効果が得られなくなった進行期の患者さんが対象です。

 根治困難なことから難病とされてきたパーキンソン病ですが、現在は症状に合わせた治療によって生活を長期間サポートできるようになっています。新たな治療法の開発も進行中ですので、患者さんやご家族にはぜひ治療に取り組み、日々を前向きに過ごしていただきたいと願っています。

監修
芹澤 正博

せりざわ・まさひろ

日本赤十字社 静岡赤十字病院
脳神経内科 部長

https://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/

1986年浜松医科大学医学部卒業。2003年より現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医。日本神経学会神経内科専門医・指導医。脳神経内科の豊富な知識で、仲間の医師からも一目を置かれる存在。