QOLを損なう「変形性膝関節症」

潜在患者数は約3000万人、特に女性は要注意!!

 中高年以降の女性に多く発症する膝ひざの痛み、その代表的な原因が変形性膝関節症です。進行すると移動能力そのものを低下させ、QOL(生活の質)を大きく損ないます。いつまでも自分の足で歩けるよう、早めに受診、適切な治療を行いましょう。

変形性膝関節症とは

 変形性膝関節症は、膝関節内でクッションの役目を果たす軟骨がすり減り、痛みや炎症、関節の変形を伴いながら徐々に進行する慢性的な病気です。進行すると痛みが悪化するのはもちろん、足が曲がったり膝の曲げ伸ばしが困難になったりして、歩行が非常につらくなります。

 患者数は高齢化社会を背景に年々増加しており、厚生労働省の報告では自覚症状を有する患者は約1000万人、潜在的な患者は約3000万人といわれています。加齢性の変化が主な原因ですが、他にも体重過多や遺伝的要素、生活環境、過去のけがや膝の手術歴など、さまざまな要素が複雑に絡んでいます。男女比では1対4と圧倒的に女性が多く、その理由として①骨・軟骨・筋肉の維持に必要なエストロゲンが閉経後急速に減少する、②50歳以上の女性は同年代の男性に比べ3.4倍の速さで軟骨が摩耗する、③男性に比べ膝を支える筋肉量が少ない、④男性に比べ体脂肪率が高い、といったことがあげられます。

まずは正確な病態を把握

 膝に痛みを感じたらできるだけ早い受診をおすすめします。まずは現段階での病態を正しく把握することが大切です。ほとんどの患者さんは立ち上がり時や歩行時に強い痛みを感じるので、寝た状態以外に立った状態でもレントゲンを撮り、骨と骨の隙間の状態、最も体重がかかる箇所などを評価します。さらに、より正確な診断のためCTやMRIなどの精密検査を加え、軟骨実質や膝関節を支える靱帯のバランスなどを評価します。ただ実際のところ、膝だけが悪い患者さんは少数です。膝が悪い方は脊椎や股関節にも負担がかかるため、こうした箇所を傷めている方も多く、またその逆もあります。膝だけでなく全身疾患として捉えることが肝要です。

個々に最善の治療法を

 治療はまず保存療法から。運動療法や服薬、注射、装具療法などを行い、肥満傾向の方には減量指導を実施します。これらを徹底しても症状が改善されない場合は手術が考慮されます。代表的な手術法は、大腿骨と脛骨の表面を削って金属の被せ物をし、その間に軟骨の代わりになるポリエチレンを挟んで膝本来の滑らかな動きを再現する「人工膝関節置換術」で、膝全体を置換するものと部分的に置換するものがあります。

 今は人生100年といわれる時代。いつまでも自分の足で歩けるように一人一人、最善の治療法を選択していただきたいと思います。

監修
窪田 秀次郎

くぼた・ひでじろう

日本赤十字社 静岡赤十字病院
整形外科 副部長

https://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/

2003年東海大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医。少年時代は地元静岡でサッカーに熱中。自らスポーツに親しんだ経験から整形外科医に。「患者さんの幸せ」をモットーに現在、変形性膝関節症治療を中心に手術、診療に奮闘中。