ビタミンC不足は老化促進にも関与

いきいきと年齢を重ねる ⑥

 冬場、ヒトの体は寒さに対抗しようとしてアドレナリンなどのホルモン分泌を増加するため、カロリーやビタミンC、B群などを多く消費。これにより栄養失調になりやすいともいわれます。その一つ、ビタミンCの働きと不足のリスクについて説明します。

ビタミンCの役割とは

 ヒトの体が生命活動を営むために必要とする5大栄養素のひとつであるビタミンは、体の機能を調節し、体の中のさまざまな化学反応を助ける役目があります。A、B群、Dなど、どのビタミンも大切ですが、ここでは私たちグループが研究するビタミンCについて説明します。

 まずその役割ですが、ビタミンCには免疫力を高める効果があり、十分摂取していると風邪などの感染症にかかっても症状が軽くすみます。また体内でビタミンEと協同して抗酸化作用をパワーアップし、体のサビを取り除き、鉄の吸収率を高めます。さらに、コラーゲンを作る際にも欠かせません。ヒトの体は多くのタンパク質から作られており、その約30%を占めるコラーゲンは、皮膚や血管、靭帯、骨、軟骨を作っている主要なタンパク質で、血管や皮膚、骨に柔軟性を与え、丈夫にしてくれます。もし体にビタミンCがなくなると、血管や皮膚の張りが失われ、全身のあらゆる所から出血しやすくなり、最後には死に至ってしまいます。この病気が壊血病です。

不足は老化促進にも影響

 私たちの研究では、ビタミンC不足のリスクとして、壊血病以外に老化促進への関与があることもわかってきました。私たちは以前、70~84歳の高齢女性を対象とした調査で、血漿(けっしょう)ビタミンC濃度の高い高齢女性は握力、片足で立っていられる時間、通常歩行速度などの筋力や身体能力が高いことを報告しました。その後、マウスによる研究によって、ビタミンC不足期間が長くなると筋肉を構成する筋線維が細くなり筋重量が減少、再びビタミンCを与えると回復することがわかったのです。また、筋力や自発的活動量などで評価した身体能力も同様に、ビタミンC不足期間が長くなると低下し、再びビタミンCを与えると回復しました。ヒトで同じことが起こるとは限りませんが、可能性は高く、ぜひ不足のないよう心がけましょう。

 注意点として、ビタミンCは水溶性であるため、一度に多く摂っても尿からすぐに排泄され、体に溜めておくことができません。そのため、毎日の食事から必要な分をこまめに摂取する必要があります。近年増加している災害避難などの際、長期間おにぎりやパン、水しか摂取できなかった場合、その後約4週間で血漿中のビタミンCがほとんどなくなることが報告されています。その対策として、災害常備品の中にビタミンCのサプリメントを入れておくことをおすすめします。日常には赤ピーマンやイチゴ、ジャガイモなどを食べるとよいでしょう。

監修
石神 昭人

いしがみ・あきひと

東京都健康長寿医療センター研究所

https://www.tmghig.jp/research/

1990年東邦大学薬学部大学院卒業。薬学博士。米国国立衛生研究所、米国国立老化研究所を経て、1994年東京都老人総合研究所(2009年東京都健康長寿医療センター研究所に改組)入所、2014年より同研究所・老化制御研究チーム研究部長。