認知症も早期診断が非常に大切

いきいきと年齢を重ねる ⑦

 東京都では今世紀前半のうちに「20人に1人が認知症」時代が来ると予測されており、誰にとっても切実な問題です。認知症は他の病気と同様、早期診断と早期対応が非常に大切です。「ひょっとして認知症?」と気になり始めたら自分でチェックしてみましょう。

早期診断・対応のメリット

 認知症とは、アルツハイマー病や脳血管障害など、さまざまな脳の病気によって認知機能が低下し、それによって生活機能が低下した状態をいいます。認知症は誰でもかかる可能性があり、東京都では2019年現在、約34万人(65歳以上人口の10・8%)が見守り、支援が必要とされる認知症高齢者であると推計されています。その数は2025年には約41万人(65歳以上人口の12・4%)に増えると考えられ、私たちは自分自身のこと、家族のこととして真剣に向き合わなければなりません。

 認知症は治らないから、医療機関に行っても仕方がないと考えられがちかもしれませんが、認知症も他の病気と同様に、早期診断と早期対応が非常に大切です。早く気づけば、症状が軽いうちに家族とともに認知症への理解を深め、話し合うことで、介護保険サービスの利用など今後の生活の備えをすることができます。また認知症を引き起こす病気の中には、早めに治療すれば改善が可能なものもあります(正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症など)。さらに、アルツハイマー型認知症は早い段階から服薬や適切なケアを行うことにより、進行を緩やかにすることが可能といわれています。「ひょっとして認知症?」と気になり始めたら、次項の10問を自分自身で、または家族や身近な方がチェックしてみましょう。

20点以上ならご相談を

 次の①~⑤については、全くない=1点、時々ある=2点、頻繁にある=3点、いつもそうだ=4点。⑥~⑩については、問題なくできる=1点、だいたいできる=2点、あまりできない=3点、全くできない=4点、で足し算してください。

 ①財布や鍵などを置いた場所がわからなくなることがある。②5分前に聞いた話を思い出せないことがある。③周りの人から「いつも同じことを聞く」と言われる。④今日の日付がわからないときがある。⑤言おうとする言葉がすぐ出てこないことがある。⑥貯金の出し入れ、家賃や公共料金の支払いが一人でできる。⑦一人で買い物に行ける。⑧バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できる。⑨掃除機やほうきを使って掃除ができる。⑩電話番号を調べて電話をかけることができる。

 このチェックはおおよその目安ではありますが、合計で20点以上の場合は認知機能や社会生活に支障が出ている可能性があります。早めにお近くの医療機関や相談機関で相談しましょう。なお、身体機能が低下している場合は点数が高くなる可能性があります。

監修
粟田 主一

あわた・しゅいち

東京都健康長寿医療センター研究所 副所長

https://www.tmghig.jp/research/

山形大学医学部卒業。東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野助教授、仙台市立病院神経科精神科部長などを経て、2009年東京都健康長寿医療センター研究所入所。同所・認知症未来社会創造センター長などを兼任。