隠れた病気、合併症が怖い「高血圧」

成人の2人に1人が罹患

 高血圧の多くは体質や加齢によるものですが、ホルモン異常などが原因の場合もあります。動脈硬化や心臓、腎臓の障害などの合併症を引き起こす前に発見し、適切に管理、治療することが、健康寿命を延ばすために大切です。

なぜ治療が必要か

 「血圧」とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のこと。「高血圧」は、安静状態でも慢性的に血圧が上昇している状態で、日本では成人の2人に1人が罹患する国民病です。長期にわたって高血圧に罹患すると全身の動脈硬化を引き起こし、心臓や脳の血管の障害(具体的には心筋梗塞や脳卒中)、また心不全や透析療法を要する腎不全などを引き起こします。

 実際に心血管障害が日本人の死因の上位を占めることを鑑みても、健康寿命を引き延ばすことのできる、高血圧の適切な管理、治療が大切だということができます。

多くは本態性高血圧

 高血圧の原因の9割以上は、「本態性高血圧」といって体質・加齢によって起きるものです。それなら自分の努力ではどうしようもないかというと、そうではありません。まずは塩分制限、そして肥満の解消、禁煙、適度な運動などによってコントロールできる部分もあります。それでもコントロールできない場合は、薬物治療になります。

 一概に高血圧といっても、患者さんの病態や年齢に応じて目標とする血圧も異なります。最近では血圧の下げ過ぎにより、逆に腎機能が悪くなってしまうことも問題になっています。多種類の降圧剤が処方できる現在、個々の患者さんに合った治療箋、広い意味での個別化医療が望まれています。

隠れた二次性高血圧

 高血圧の原因の残り1割弱は、ホルモンの異常などによって起きる「二次性高血圧」で、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、腎血管性高血圧、バセドー病、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。

 単に「高血圧」と診断・治療されている患者さんに潜む治療可能な二次性高血圧を、高血圧による動脈硬化や心腎障害などの合併症をきたしてしまう前に拾い上げ、適切に治療していくことが大切です。特に高血圧の罹患年数が必然的に長くなる若年の高血圧患者さんは、積極的に検査・治療を行う必要があります。

 当院では複数の降圧剤によってもコントロールが難しい難治療性高血圧や二次性高血圧を中心に治療している他、本態性高血圧の患者さんにも最適な降圧治療を目指しています。若いのに血圧が高い方、降圧剤を内服していてもコントロール不良の方はぜひ受診をおすすめいたします。

監修
槙田 紀子

まきた・のりこ

東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科准教授

https://www.h.u-tokyo.ac.jp/

1995年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院などの臨床を経て、2003年東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。医学博士。専門は、内分泌代謝・糖尿病。ホルモン作用に欠かせないGタンパク質共役受容体(GPCR)をテーマに、臨床と研究に日々奮闘中。