動脈硬化が招く「狭心症」と「心筋梗塞」

心疾患は日本人の死因の第2位を占める病気

 突然死につながる心臓発作、その原因にあげられる「狭心症」と「心筋梗塞」は主に動脈硬化によって起こります。これら心疾患は冬に発症しやすい病気ですが、動脈硬化のリスク要因を持つ人は、暑い季節も脱水などを引き金に発症しやすいので要注意です。

罹患者増が続く心疾患

 心臓は、表面にある冠動脈という血管により栄養を受けています。「狭心症」は、この冠動脈が動脈硬化でつまってしまい、心臓の筋肉がダメージを受けた病気のこと。一方、動脈硬化などで筋肉が壊死まで陥ってしまった病気は「心筋梗塞」といい、重症の場合は死に至ることもあります。

 もともと日本人には動脈硬化で血管がつまる病気は多くなかったのですが、食生活の欧米化などにより増加し、現在もなお増え続けています。動脈硬化になりやすい原因として、「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」「高血圧」のような生活習慣病、「喫煙歴」「家族歴(親族に狭心症や心筋梗塞の人がいる)」のような環境因子を持っていることがあげられます。

 いずれも早期に発見・治療することが重要となりますが、高齢者や糖尿病患者の中には全く自覚症状がないまま発症する人もいるため注意が必要です。リスク要因を持つ人はもちろん、持っていないと思っていても、日頃から適度な運動や食生活の改善などを行い、夏はこまめに水分を摂取して発症防止に心がけることが大切です。

動脈硬化の検査と治療法

 動脈硬化の検査には、入院をしなくても外来で行える「心臓(冠動脈)CT検査」があり、レントゲンに映る薬剤(造影剤)を点滴に流して冠動脈の状態を評価します。そしてもう一つ、手首の血管などからカテーテルという細い管を挿入し、冠動脈だけに直接造影剤を流してレントゲン撮影を行う「心臓カテーテル検査」があります。こちらは入院が必要ですが、心臓CT検査に比べて精度が高い検査です。

 検査を経て軽症と診断された場合は内服薬のみで治療を行います。血管のつまりが強いと診断された場合は「心臓カテーテル手術」を行います。バルーン(小さな風船)で狭い部位を広げたり、ステント(金属性・筒状の器具)を冠動脈内に留置したりして冠動脈の流れを改善し、心臓の筋肉のダメージを回復させます。

 現在はステントに細胞増殖を抑える薬剤を塗り込んだ「薬剤溶出性ステント」を使用することが多く、当院でも大変よい成果をあげています。カテーテル手術よりも外科治療(冠動脈バイパス手術)が適している場合は、心臓血管外科のある病院で治療を行います。

監修
中嶋 直久

なかじま・なおひさ

医療法人社団永生会 南多摩病院
循環器内科 部長

https://www.eisei.or.jp/minamitama/

1998年順天堂大学医学部卒業。医学博士。順天堂大学附属順天堂医院、横浜労災病院などを経て2012年より現職。日本内科学会認定医・専門医。日本循環器学会専門医。日本心血管インターベンション学会認定医。